地面に腰を下ろし、洞窟の入口に目を遣ると、外ではごうごうと強風が唸りをあげていた。
 進むこともままならないような中で、ここのような良い風除けを見つけられたことは幸運だった。
 だが、岩壁は、風を阻むことはできても、足元から忍び寄る冷気までは防げない。小さく身震いして、マールが自身の二の腕を抱きしめた。胸元から上の素肌をさらけ出している服装では、当然な反応だろう。
 クロノは無言で上着を脱いで、彼女に羽織らせた。
 マールが目をぱちくりさせて、彼を見上げる。
「クロノ、これ……」
「うちの母さんが、前に言ってたんだ。女の子が肩や腰なんかを冷やすのは良くないって」
 自分の行動になんとなく気恥ずかしさを覚えて、クロノは早口でまくしたてた。
「だからさ、それ、羽織ってろよ」
「でも、クロノだって半袖なんだし、寒いんじゃ……」
「いいんだよ、オレは! 男なんだから」
 多分にやせ我慢と意地含みに言い放ち、クロノはマールに背を向けた。

 まるでケンカでもしてるみたいだ、と思う。
 もっとスマートに、素直に言えたならいいのに。
 たとえば、マールが心配だから、大切だからだ、とか。
 ―― そう考えてすぐに、無理だと結論づける。
 閉ざされた空間に二人きりでいるだけで、馬鹿みたいに意識してしまうような、こんな状態では。
 
 そのまま黙り込んでいると、やがて小さなため息が聞こえた。
 そして、背に柔らかな感触と重みがかかり、細い腕が彼の身体に回される。
 マールが抱きついてきたのだと理解して、クロノは寒さ以外の理由でも頬を赤くした。
「ほら。やっぱり、こんなに冷えてるじゃない」
 腕に手を触れ、母親が熱のある子供を気遣うような口調で、マールは優しくたしなめる。
「だから、こうしようよ。私がクロノの上着の代わり。これなら二人ともあったかいでしょ?」
「…………」
 その手をはねのけることもできず、クロノはただ、真っ白な息を吐き出した。
 どうかマールがこちらの顔を覗きこんできたりしませんように、と願って。


*****


頂き物の小説に触発されて、
「上着をマールに羽織らせるクロノ」を描きたくなって描いた絵です。
文の方は絵を描いてる最中にふと思い浮かんだものなんですが、
シチュがシチュだけに、微妙に頂き物とかぶってるかも……蒼海さんごめんなさい;;

以前描いたこの絵の後、洞窟を見つけて雨宿り〜のつもりで当初は考えてたものの、
それだとお互いの服も濡れてるだろうし、
そのままくっついたらかえって寒いんじゃ……というわけで、
その時とは違う場所で、外は風は強いけど雨は降ってなかったという方向で。
ついでに言うと洞窟の中って構図、裏の某イラストと一緒なんですが、
そっちに付けた小ネタと話を繋げるといろいろ台無しっぽい気がするので
設定的には別モノということでお願いします。
……すみません単に自分のネタの引き出しが少ないだけです。


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