地面に腰を下ろし、洞窟の入口に目を遣ると、外ではごうごうと強風が唸りをあげていた。 進むこともままならないような中で、ここのような良い風除けを見つけられたことは幸運だった。 だが、岩壁は、風を阻むことはできても、足元から忍び寄る冷気までは防げない。小さく身震いして、マールが自身の二の腕を抱きしめた。胸元から上の素肌をさらけ出している服装では、当然な反応だろう。 クロノは無言で上着を脱いで、彼女に羽織らせた。 マールが目をぱちくりさせて、彼を見上げる。 「クロノ、これ……」 「うちの母さんが、前に言ってたんだ。女の子が肩や腰なんかを冷やすのは良くないって」 自分の行動になんとなく気恥ずかしさを覚えて、クロノは早口でまくしたてた。 「だからさ、それ、羽織ってろよ」 「でも、クロノだって半袖なんだし、寒いんじゃ……」 「いいんだよ、オレは! 男なんだから」 多分にやせ我慢と意地含みに言い放ち、クロノはマールに背を向けた。 まるでケンカでもしてるみたいだ、と思う。 もっとスマートに、素直に言えたならいいのに。 たとえば、マールが心配だから、大切だからだ、とか。 ―― そう考えてすぐに、無理だと結論づける。 閉ざされた空間に二人きりでいるだけで、馬鹿みたいに意識してしまうような、こんな状態では。 そのまま黙り込んでいると、やがて小さなため息が聞こえた。 そして、背に柔らかな感触と重みがかかり、細い腕が彼の身体に回される。 マールが抱きついてきたのだと理解して、クロノは寒さ以外の理由でも頬を赤くした。 「ほら。やっぱり、こんなに冷えてるじゃない」 腕に手を触れ、母親が熱のある子供を気遣うような口調で、マールは優しくたしなめる。 「だから、こうしようよ。私がクロノの上着の代わり。これなら二人ともあったかいでしょ?」 「…………」 その手をはねのけることもできず、クロノはただ、真っ白な息を吐き出した。 どうかマールがこちらの顔を覗きこんできたりしませんように、と願って。 |