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巨大な焚き火から舞い散る火の粉が、星月夜の空を焦がしている。 周りには地面に直接置いた切り株のテーブルがあり、その上には土器に入れられた酒と、大きな葉を皿代わりに、焼いただけだったり採ったまま盛り付けただけの豪快な料理が所狭しと並んでいる。 炎を囲んだ野外での宴会は、キャンプファイヤーを思わせた。 ただ、普通と少し違うのは、宴席の人々のほとんどが毛皮をまとっただけの野性的な格好をしていること。そして、ここが、オレたちの時代から六千五百万年もの時を隔てた過去だってことだ。 聖剣グランドリオンを修復するために、ドリストーンを入手しにやって来たオレたち四人は、何故かエイラという女酋長に妙に気に入られ、彼女の村に半ば強引に招かれることになった。 まあ、話を聞いてみると、どうやら彼女がドリストーンを持っているらしいから、渡りに船ではあったんだけど。 村に着いたとたん瞬く間に宴の準備が調えられ、飲めや歌えやの大騒ぎになって、なんだか詳しい話を聞くタイミングがないまま、なし崩しにここにいる……というのが現状だったりする。 ルッカはそれほど飲まないうちから絡み酒の様相を呈していて、うかつに近づけない。 ロボは、好奇心からだったのか何なのか、試しに飲んでみた酒のせいで、あまり調子が良くないらしい。 マールはほろ酔いで村人たちに混ざって楽しそうに踊っている。 ―― こりゃ、頃合を見計らって、オレが訊きに行かなきゃダメっぽいな。 苦笑いして、杯を傾ける。 エイラの方に目を向けてみれば、村人と何やら話し込んで盛り上がっているようだった。もう少し待たないといけなさそうだ。 目線を戻すと、火のそばにいるマールが視界に入った。 舞踊と呼ぶには洗練されていない、素朴すぎる踊りを、彼女は軽やかな足どりで舞っている。 そんな様子を見るともなく眺めていて、ふと思い出した。千年祭で、今と同じように踊っているマールを目にしたことを。 ……そういえば、友達になって、もうかなり長いような気がするけど、実際は大して経ってないんだよな。 ゲートを使った時の『時間』の流れの概念は、何度説明されても未だによくわからないってのが本音とはいえ、マールと出会ってからの期間は、ルッカとの腐れ縁の十数分の一にだって全然満たないぐらいだと思う。 それでも、ずっと付き合ってきた仲間のように打ち解けているのは、彼女の資質によるところも大きいのかもしれない。 オレ自身、壁を作るようなタイプじゃないし、馴染むのが早い方だと思うけど、マールはそれを上回っているんじゃないだろうか。 育った環境にも関わらず、誰に対しても気さくで、人なつっこくて。 思えば、一緒にお祭りを見ようと言い出したのも彼女だった。 「ねえ、クロノも一緒に踊ろうよー!」 視線を感じたからか、マールがこちらを振り向いて、明るく呼びかけた。 踊ったりするのはあまり得意じゃないオレは、顔の前で手を振り、笑った。 男の子と一緒にお祭りを見てみたかった、と彼女は言った。 だとしたら。 あのとき知り合ったのがオレじゃなくても、今みたいな微笑みを向けていたのだろうか。 その指を、オレ以外の誰かの腕に絡めて――。 (…………あれ?) 不穏な胸のざわめきに、手が止まった。 ―― なんだよ、これ。 どうしてこんなに面白くない気分になるんだ? 出会いなんて偶然にすぎない。 今考えたことだって、可能性として、いくらでも有り得ただろう。 それに。よくよく考えてみたら、オレと出会ってなければ、マールはこんな一連の面倒事に巻き込まれてなんかいなかった。他の奴と知り合っていた方が、よっぽど良かったはずじゃないか。 ……なのに。 (オレも酔っ払ってるのかな) 髪を掻いて、器を置く。 そろそろ話を聞きに行った方が良さそうだ。本格的に頭が働かなくなる前に。 オレは立ち上がって、エイラの所に足を向けた。 ―― それは、本当は、兆し。 でも、そのことにオレが気づくのは、もう少し後になってからだった。 −END− |
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<オマケのあとがき> (1)「マールが同じ態度を別の誰かに示していたかもしれないこと」からふくらませた話。(「あのとき知り合ったのがオレじゃなくても〜」のフレーズが最初に浮かんだ) 何からそこに考えが及んだのかは自分でもよく覚えてませんが、とりあえずJRに乗ってる時に思いついて仕上げるまで1日(笑) タイトルは好きな作家さんの読みきりマンガから拝借。 (2)テーマは「自覚の一歩前」と「ヤキモチ」。度が過ぎてる嫉妬は困りものですが、ちょっとしたヤキモチは可愛いですよね。男でも、女でも。 (3)情景描写を入れたせいか、いつものクロノより落ち着いてるというか大人びてるような気が。気持ち自覚してからの方がお子様っぽいってどーゆーことでしょうかねぇ。(笑) (4)今まで大小こまごま取り混ぜて20本近くクロノの話書いてますけど、その大部分がマルチイベント以降の話なので、書いててちょっと新鮮でした。私、一目惚れってのが好きじゃないもんで(熱しやすく冷めやすい印象があるから)、どうしても恋愛話っつーとゲーム後半のストーリーに寄りやすいんですよね。自己設定が足かせになってる部分もあるかも。 >>>side M <<<小説目次 <<<クロノトリガー目次 <<<TOP |