● 時と光の下で 〜side C〜 ●




 目の前で、真っ白な光がはじけた。
 奇妙に歩みを鈍くした時間の流れの中で、オレは死を肌身に感じた。
 
 色を失くした景色が一瞬のうちに往き過ぎる。
 遠ざかる、たくさんの人たち。
 オレの、大切な……離れたくない、離したくない何もかもが、遥か彼方へと消える。
 すべて幻のように。
  
 胸が痛かった。
 息が詰まった。
 苦しくて、叫びたかった。
 次に来るだろう灼熱の瞬間を予感して、オレは目をつぶった。
 
 ……だけど。
 それは、いつまでたっても来なかった。
 代わりに届いたのは、声。
 オレの名を呼ぶ、切ないほど心に響く ―― 声。
 
 ゆっくり目を開ける。
 ぼやけて定まらない視界。
 ゆるゆると、もどかしく合わさる焦点。
 
 そこにはマールがいた。
「お帰り……クロノ……!」
 空色の瞳に涙をいっぱい浮かべて言う。
 その後ろには、ルッカがいて、カエルがいて。
 ロボがいて、エイラがいて。
 みんな、心配そうな、ホッとしたような……嬉しそうな。
 そんないろんな気持ちがごちゃ混ぜになった様子で、オレの顔を覗き込んでいた。

 オレは、といえば。
 これがきっと『夢』なんじゃないか、と思っていた。
 人が死ぬときに見る夢。
 いくら手を伸ばしても届かない。
 触れようとした瞬間、あっけなく消えてしまう。
 そう、ちょうどついさっき遠くに散っていった幻の、儚い続き。

 ―― そんなものじゃないとわかったのはすぐだった。
 首筋に回された腕の柔らかい感触も、肩口にかかる温かな吐息も。
 服を濡らす、熱い涙も。
 それは決して夢なんかじゃない。
 何より確かな証拠。
 何より確かな現実。
 何より確かな、…いのち。
 オレの心臓が、ドキリと大きく脈打つ。

 生命の優しいぬくもりをオレに与えながら、マールは小さく呟いた。
「もう遠くへ行っちゃあダメだよ」……と。
 しゃくりあげる華奢な背中をぎこちなく抱きとめて、オレはうなずいた。
 オレの『時間』を取り戻してくれた、かけがえのない仲間たちへ、
「ごめん」と「ありがとう」を繰り返して ―― 。


 −END−



<オマケのあとがき>

(1)「もうそういた」への投稿作品。テーマは『遠距離』。「時と光の下で」の中で、最初に書いたのがこれでした。“Chrono side”と銘打ったのは、単に誰の独白かすぐわかるようにタイトルに入れとこうと思っただけで、他キャラ視点のを作ろうと思ってではありませんでした、初めは。

(2)当時つけた「オマケのあとがき」コメントを見返してみるに、どうやら「いつも女の子寄り視点の話になるから、たまにクロノ視点で」ということだったらしく。この時期は今と正反対だったんですねー…。死の山イベントでクロノ視点は珍しい、という感想を頂きました。



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