● 時と光の下で 〜side M〜 ●




 ずっと信じてた。
 あなたと再びめぐりあえる明日のことを。
 だって、そうじゃなかったら、私は一歩も前になんて進めなかった。
 ううん。……きっと、立ち上がることだってできなかったから。

 なのに、どうしてなのかな。
 今、あなたがいる。ここにいる。生きている……そのことを、なぜ、信じられないんだろう。
 なぜ、遠くに感じるんだろう。
 
 失われた時間を取り戻すなんて、ホントはできないんじゃないか……って、心のどこかで思ってるのかな。
 それとも、あんまり夢に見過ぎたから、また夢なのかもしれない、って疑ってるのかな。
 それとも、
 ……知らないうちにまぶたに溜まったこの涙が、あなたの顔をぼやけさせてるからかな……?

 けぶる視界の中に、ふたつのヒスイ色が揺れた。
 私の大好きな色。
 あなたの瞳の色。
 誰よりも大好きな、あなたの…

「クロノ……!」
 考えるより先に、呼んでいた。あなたの名を。
 何度も繰り返される夢の中で、いつもそうしていたように。
「お帰り……クロノ……!」

 夢なら途切れる。だけど、途切れなかった。この時の流れは。
 幻なら消える。だけど、消えなかった。腕の中のあなたは。
 伝わるぬくもりに、頑なな不安が溶けていく。
 今ならわかる。
 あなたが確かにここにいること。
 生きていること。
 私の手の届くところに、帰ってきたこと。
 ……長い長い悪夢が、ようやく終わりを告げたこと。

「もう……遠く行っちゃあ、ダメだよ……」
 涙ににじんだ願いを、そっと呟く。
 うなずき返す、クロノ。
 小さな子供を慰めるみたいに背中に置いてくれた、その手がとっても優しくて……あたたかくて。
 私はますます泣きたくなった。
「クロノがいない間にね……」とか、
「私、その時にね……」とか。
 いっぱい言いたいことがあるのに、言葉が出ないよ。

 ねえ、クロノ。
 たくさん話そうね。
 他愛ないことでもいいの。
 いろんな話がしたい。
 あなたと、笑い合いたい。
 今日も、明日も、その先もずっと。

 ……だけど、今は。今だけは。
 大好きな人に寄りかかることのできる嬉しさを、
 もう少し、抱きしめさせていてね……。


 −END−



<オマケのあとがき>

(1)「時と光の下で」は3つとも関連付けてありますが、このside Mだけは同人誌での書き下ろしでした。「もうそういた」が無くなったずっと後に書いたものです。side K、side C、side M共通のこだわりとしては、投稿テーマが『遠距離』だったので、必ず文中に「遠い」という単語を入れるというのがありました。

(2)死の山イベントでマールサイドの話はありがちかな、と思うんですが。自分的にはやっぱり外せないだろうということで(笑) 死の山がらみのネタはこれ含めてそれなりに書いてるものの、また違った切り口で描いてみたいなーとは思いますね。



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